配布メギドについて

 二月から三月のメギドは配布メギド無しだった。プロデューサーレターによると、四月まではこの方針のままということで、理由となったオリエンスの修正にそれだけ重いインパクトがあったのは間違いないだろう。三か月の配布メギド無しには何らかの影響があることは運営側も想定しているだろうけど、ひとつには会社に対するケジメの付け方なのかもしれない。現実的な方針か非現実的かでいえば、前者だろう。

 それはそうと、あらためて配布メギドの意義について考える機会にもなったので、サタナキアBのことも含めて短く書いておく。

 まずは二月の『カカオの森の黒い犬』をあらためて思い返してみる。確かにあそこで実装されたのはスコルベノトとバティンだけだったが、あのイベントはそもそもメギドを配布しない予定だったんじゃないか、と時々思うことがある。
 強いて配布候補になるかな、と私が感じたのはリジェネザガンだった。闘牛士というバトルスタイルからは、ブレイクでの実装もあり得るかもしれないし。
 とはいえ、物語でザガンが活躍する場面は少なめで、スコルベノトとの交わりも、交流というよりは、背中を押されたぐらいである。スコルベノトとバティンのどちらが配布でもおかしくないような話の作り方はしているけれど、それでもザガンの活躍が書かれない説明にはならない。オリエンス修正から一月の猶予はあるにせよ、ザガンの活躍を削るのも急な話だろう。
 そもそも、配布が無いから急いでオーブと報酬を準備しました、ではさすがに制作が間に合わない気がする。なので、昨年の『さらば哀しき獣たち』と同じく、最初から配布メギド無しだったんじゃないか。その代わりに前回同様SSRオーブと、新たに霊宝を追加してみよう、という発想は自然だし。
 月に三柱から二柱に減らすだけでも、制作コストの多少の緩和にはなるだろう。徐々にイベントも恒常化されているから、序盤特有のメギドが少な過ぎて戦略のバラエティに乏しいという問題は、少しずつ解決していくのだろう。
 
 一方で、三月の『心惑わす怪しき仮面』は、サタナキアBは配布だったんじゃないかと勝手に考えている。物語自体がサタナキアを主役に「成長」(プルフラス)を描いているのもあるが、キャラエピでオレイとアシュレイの関係が書かれているのもそうだし、もっと興味深かったのはウァプラからサタナキアへの折り合いの付け方だ。
 ちょっと妄想が過ぎるけど、あれはまもなく復刻されるだろう『見習い女王と筋肉の悪魔』に向けての布石だったんじゃないか。単純化するなら、その本筋はウァプラがザガンやマルチネのような、決して考えが相容れない他者にも「マシ」な連中が居ると認めるまでの物語だ。『心惑わす怪しき仮面』の時系列ではサタナキアと折り合いがつけられるぐらいになっていて、これはリジェネ後のウァプラなんだよ、と事前に描写を用意しておけば、物語はすっと読み易いものになるだろう。

 もちろん性能は見逃せない。
 サタナキアBは、初心者から上級者まで使いこなせる性能だ。その見所はまずはスキルによる前列無敵だ。リーダー時にアタックでチェインを開始するMEは、素早さの遅いガープへ容易にチェイン出来る。メギドの序盤はまず防戦体制を整えることが課題だから、初心者には大いに役立つ性能だろう。
 さらにサタナキアBは、中級者以上をターゲットにしているだろうチェインの既存の問題点を丁寧に潰したメギドでもある。チェインで気になりやすいのは①覚醒上げが面倒だし、②チェインに必要なメギドが多いあまりディフェンダーが入り辛く、準備段階で戦闘不能になってしまうし、③そもそもフォトンの縛りが厳しく肝心のチェインで決めたい時に上手く決められないし、④チェイン自体のメリットが基本的に乏しい、の四点が挙がりやすいだろう。①は特性、②はスキルの無敵、③覚醒スキルによるC→Sへの変換、④奥義の攻撃力昇華と正確に対応している。つまり、ハイドロボムにおけるアイムRに近い役割がサタナキアBには与えられている。
 フォトン予知と攻撃力低下(防戦)のオリアスCや、列攻撃のアガレスCなど、初心者にこそ使いやすい性能のメギドを配布しつつ、時にニバスB、ベリトBのような中級者以降のプレイで輝く性能のメギドをバランス良く配布してきたのが去年から今年までの配布メギドの戦略だろう。サタナキアBは、その両面を併せ持った、非常に良く練られたキャラコンセプトだった。
 それだけに、(実際どうだったのかは確定できないし、近いうちに明かされることはまずないだろうが)配布とならなかったのがつくづく惜しいな、というのが正直な気持ちだ。

 そもそも配布メギドは、初心者から上級者まで、あらゆる層のプレイヤーが召喚出来るメギドである。上級者でも初心者がどう運用すればいいか考えられるし、初心者は最終的にそういう使い方があるんだ、と知ることが出来る(たとえば中級者がオリアスCを取り扱えば、その耐久力を活かしてサタニックリブラを持たせたサブ盾の運用が出来るだろう)。
 そして「今ならクズが無料!」「今なら博打で全財産スったギャンブラーが無料!」と新規参入を呼びかけることも出来る。その呼びかけの効果は分からない。内輪の流通で終わるかも。
 でも、『メギド72』というソーシャルな要素を極力排したソシャゲゲにおいて、非常に貴重なソーシャルな部分を担当しているのが配布メギドなんじゃないか。

 ソーシャルゲームの原義は、「SNS上で(ソーシャルアプリとして)配信されているゲームの総称」らしい(Weblio辞書)。この定義がいわゆる「ソシャゲ」からずれていることは既に数多く指摘されているだろうけれど、「こんなメギドでパーティを組むと攻略出来るよ」「こんな運用も出来るよ」という書き込みや動画が、たとえばtwitterで共有され回覧されていくのを眺めていると、SNSをすっ飛ばして、インターネット黎明期の攻略掲示板を読んでいるような、とても懐かしい気持ちになる。
 
 メギド配布の三か月取りやめはそうせざるを得なかった可能性が高いし、これまでメインストーリーでも惜しみなく配布してきた以上、いずれどこかで必要な期間だったのかもしれない。
 とはいえ、ちょっぴりさみしくなってしまったのも確かだ。
 私はいずれ毎月の配布メギドには限界が来るだろうし、霊宝・オーブ報酬だけでもイベントとしては間が持たせられるんじゃないか、手持ちが少ない初心者には恒常イベントを用意すればいいはずだと信じていた。この冬の方針通りのことだ。
 自分でも意外なさみしさだった。
 しかし、それも五月で終わりだろう。メギドにとっても厳しい冬だったかもしれないが、是非春からも無理のない範囲でゲームを盛り上げていってもらえればと願う。