メギド72が週間ファミ通の表紙を飾ったことは、何を意味するのか?

 メギド72がついに週間ファミ通の表紙を飾った。ついに、というのは調べ物をしてから「これ、よく特集やってくれたな…」という感慨を覚えたからだ。


 たしかに、もともとファミ通はメギドをかなり好意的に紹介してくれるメディアだった(東京ゲームショウでの動画のタイムテーブルが印象深い。ハロウィンスキン初公開動画でもある)。記憶の限りでは、生放送の難しさがひとつの課題になっていた時期に、未プレイ者から既存ユーザーまで楽しめる放送内容をばっちりアシストしてくれたという、嬉しい思い出がある。

 
 なので、メギド72がファミ通の表紙を公式イラストで占めたのは、なんとなく良いニュースなんだろうと最初に感じた。ただ、その良いとはどの程度良いのか、つまりソシャゲが週間ファミ通の表紙を単独で埋めるのはどの程度のインパクトがあるのかについては、調べた限りでは書いてある記事が見当たらなかった。なので、とりあえず10年分の表紙のみを遡って見返してみた。

 

 10年と定めたのはこの年表からで、2009年10月の『怪盗ロワイヤル』がソシャゲの走りとされているからだ。ソシャゲの定義付けは微妙に難しい気もするが、こちらのブログを参照する限り2007年~2009年あたりがガチャ&対戦要素を採用した携帯ゲームの走りなんだろう。2007年まで検索した限りでは『釣り★スタ』が週間ファミ通の表紙を飾ったことはないようだし(当時のCSファンからしたら抵抗感のある内容だったのかもしれない)対戦要素を追加した『怪盗ロワイヤル』リリースの2009年をひとつの区切りにしていいのではないかと思う。ちなみに、運営は奇しくもメギド72と同じDeNA

 とはいえ本格的に、今聞いても「ああ、ソシャゲだ」とすぐに思えるような代表的タイトルがリリースされるのは2014年だ。
 『モンスターストライク』『パズル&ドラゴンズ』『グランブルーファンタジー』『白猫プロジェクト』と、現在までサービス継続しているビッグタイトルが一斉に花開く頃でもある(大型アプデは何度か重ねているだろうが、あらためてヒットしたソシャゲの耐久年数は凄まじいものだ)。大雑把には、2007年からガチャ要素のある携帯ゲームが始まり、2009年の『怪盗ロワイヤル』で対戦要素が組み込まれ、更に2014年にグラブルやモンストといった現在までサービス継続している大型IPソシャゲが一気にリリースされ現在に至る、と整理出来る。
 

 とはいえ1回表紙絵を飾っただけで早々にサービス終了した作品もいくつかある。つまりはリリース前に広告的に大きな特集を組まれ、そのあと早期にサービス終了したような作品である。だから、1回のみ表紙&特集に取り上げられたソシャゲ同士、比較が必要になる。リリース前、あるいは直後に特集された作品と、しばらく経ってから特集された作品では、なにか違いがあるだろうか、という地点だ。

 

 ソシャゲは走りが肝心だとは(素人の間で)よく言われる。そもそもソシャゲの売上を正確に把握することは難しいし、私はまともな統計を見たことはないので実情は簡単にわかるようなものではないが、ソシャゲはある種の祭りや宗教に近いので、最初期の売り上げはその後の課金欲にある程度の影響を与える、と見て差し支えないと思う。サービス終了するのが明らかなソシャゲに課金する人は多くないはずで、最初からドブと分かっているガチャを回すようなものだ(実際は、それでも人は課金するわけだけど)。
 
 「メギド72がファミ通の表紙を飾ったことはどの程度インパクトがあるのか?」は、結果的には「メギド72がファミ通の表紙を飾ることで、どの程度サービス継続を信頼していいのか?」という問に等しいかもしれない。ソシャゲ間での売り上げの比較は悩んだが、正確な参考値を知れるサイトが見当たらなかったので除外することにした。けっこうな頻度でチラ見してしまうGame-iとかも参考値に取り上げるには微妙そうだ。とはいえ、大まかな指標にはなるだろう。

 検索は、
ファミ通.com  

Fujisan
ebten
 以上の3サイトを併用して行った。

 ひとりで10年分の表紙を見続けた分、見逃したタイトルがある可能性は高い。特にFFは予想外にソシャゲタイトルが多く、ギルティギアなどCSの印象が強いものも抜け落ちている可能性が高い。そうしたタイトルについては、適宜コメントなどでご指摘いただけると有難いです。


 表紙絵を飾った、と判断する基準は「制作側の公式イラストチームによる絵が単体で表紙を占めている」かつ「あくまで派生作品ではなくソシャゲの特集が単体で組まれている」ものとした。だから次のようなファミ通の犬がセットでついてくる表紙はカウントから外したし、3DS版モンスターストライクパズドラクロスの特集号、あるいはFGOアーケード特集号など、CS版やアーケード版がメインの号については外すことにした(FGOは悩んだが、3騎はアーケード版の3DCGで描かれたサーヴァントからの選定らしいので、あくまで表紙を飾るのはFate/Grand Order Arcadeと判断した)。派生元の作品の情報も書き込まれている可能性は高いが、あくまで派生作品がメインと判断し、除外した。

 2009-2019間の表紙を単体で飾ったソシャゲは、次の通りになる。カウントを間違えていなければ、メギド72でちょうど30作目のタイトルになる。

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 いちばん早いのは2012年の『ファイナルファンタジー ブリゲイド』だ。『メビウス ファイナルファンタジー』も2年後に取り上げられているし、CSの宣伝が多い週間ファミ通がFF派生作のソシャゲと親和性が高いのは自然だろう(メギド72の宮前PだってそもそもFFのスタッフだというのは、見逃せない事実だと思う)。検索範囲では以降のFFソシャゲが表紙絵を飾ることはないが、『タクティクスS』や『アートニクス ダイブ』を除けば長期的な運営の続いているタイトルばかりである。
 ファミ通絵のため除外したが、本格的にソシャゲを取り上げ始めるのは2014年10月2日販売の『パズル&ドラゴンズ』と2014年10月30日の『モンスターストライク』からだろう。『グランブルーファンタジー』はファミ通絵で2015年8月20日とやや出遅れるが、2016年3月11日には早々に公式イラストでの2周年記念表紙を獲得している。
 『パズル&ドラゴンズ』と『グランブルーファンタジー』は現在まで周年記念特集を獲得し続けており、その息の長さに驚かされる。
 
 メギド72と同様に、これまで一回表紙絵を飾ったタイトルは次の22作(全体の73%)。『ブレイブフロンティア2』は2019年3月でアプデ終了とのことだが、6周年記念アプデを2019年7月3日に行っているのでサービス継続しているものと見なした。

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  まず重要なのは、1回表紙絵に取り上げられたタイトルでも、サービス終了しているものがいくつかあるということだ。赤字で表記した。1回表紙絵に取り上げられた群では5/22作で22%、2回以上表紙に取り上げられたソシャゲでサービス終了しているものはないから全体では5/30作で17%。
 ソシャゲがサービス終了に至る理由は単に売り上げの問題から、アプデのコストが売り上げを越えてしまう、コアスタッフが消えた等々あるだろうが、ここに挙げたサービス終了済のソシャゲは2種類に分かれる。①サービス開始前にリリース記念特集を併せて行ったが、その後比較的早期にサービス終了したものと、②比較的長期の運営の後、アプデ終了といった形式で円満にサービス終了を迎えたもの、の二種類だ。前者はたとえば『テクテクテクテク』だし、後者は『テラバトル』が当てはまる。現在に見慣れたソシャゲが生まれ始めたのは2014年だから、ここから4年サービスを継続した『テラバトル』は(運営の実情は知るべくもないが)外野から見れば安定した運営に見える。一方で、1年~それ以内にサービス終了した『テクテクテクテク』『テラバトル2』『ランページ・ランド・ランカーズ』は、いずれもリリース前の特集である。

 大半のソシャゲ(1回取り上げられた群では15作/22作で68%、全体では『アイドルマスター ミリオンライブ!シアターデイズ』を加えて16/30作で53%)はリリース前~リリース後2か月以内に特集記事が掲載されている。青字で表記した。
 『ファイナルファンタジー ブリゲイド』がリリースから4か月経過して特集されたのは、そもそもこの時点でソシャゲへの抵抗感が強かったのではないかと思うが、サービス開始から1.8年後の『乖離性ミリオンアーサー』と3年後の『Fate/Grand Order』はかなり特異である。
 あくまで1回表紙を飾ったソシャゲだけを見たものになるが、2019年3月の『バンドリ!ガールズバンドパーティ』以降は、サービス開始から1年~2年経過し、比較的安定した運営状況にあるソシャゲを集中的に取り上げている。
 これをどう読むか。
 個人的には、2か月以内のソシャゲの運営状況なんてその後を推測するうえでまったくアテにならないと思っているので、1~2年経ってから特集に取り上げるという方針の変更は、良いなあと思う。ソシャゲの最初期はとにかくユーザーに振り向いてもらわなくてはならないから、まずはユーザーを先んじて占領している既存ジャンルから積極的に引き剥がさなくてはならない。こういう言い方は行儀が悪いけど、ソシャゲの「砂かけ」が誘発されるのはけっこう自然な現象だと思う。
 そこで、序盤の石と強キャラの配布がひとつの定石になるのではないかと勝手に思っている。メギドの初期は石は然程配布していなかったように記憶しているけれど、アンドレアルフスなんかPvPでもPvEでも大活躍出来る、非常に汎用性の高いメギドだ。2年も経てばコンテンツもある程度充実し、不満も自然に生じる。それを特に汲み上げ、時に後回しにしながら運営する、そんな脂の乗り始めた時期が2年という節目ではないかと思う。ソシャゲのスタートアップを応援する、という態度ではないわけだけど、ファミ通はもともとCSの雑誌だろうし、そのほうが自然なのではないか。
 
 2回以上取り上げられているソシャゲはグラブル・モンスト・白猫といったソシャゲ創成期を切り開いた先駆者たち、あるいはアイマスのような強力IP(シリーズを総合すると全6回)だし、艦これはそもそもKADOKAWAだ。単独タイトルでの最多はグラブル・モンスト・艦これの計4回。これらは今後も比較的安泰なタイトルだろう。
 そんな中で2016年6月とやや出遅れたスタートアップながら、2度特集に取り上げられているSHADOWVERSEが結構印象的だった。

 まだまだメギドの売り上げとユーザー数は欲しいけど、表にして見比べると、控えめに見ても3年~4年ぐらいはサービスは継続するのではと思う。それだけ生き残れば、ソシャゲとしては相当長命なほうだろう(メギドはしばしば大手IPと比較されるので、たぶんそうは思われない気もするが)。
 ただ、これらはちゃんと統計処理をしているわけではない、単なる印象論に過ぎない。また、売り上げがバンドリ&シノアリス&シャニマスと並んでいるなんてことは言えない。とはいえ、メギド72は未だにずっと高品質なシナリオ(忌まわしき蒼の組曲良かったね)と可愛くてカッコ良い最高のキャラクターたちと、3Dモデルと、声優さんたちの見事な演技と、世界観の作り込み(アジトのお風呂事情とか、スカイエンパシーとか、エトワールオレとか……)と寄崎さんの音楽etcetc...と個人的にサイコーのゲームであることは間違いないので、やっぱり今回の特集は、ものすごく嬉しい。

 そんなわけで、まとめる。

ファミ通の表紙を単体で飾ったことのあるソシャゲは、リリース2か月以内に特集されたもの、サービス開始1-2年で特集されたものの2種類に分かれる。
②前者は1年以内のサービス終了が多少目立つが(1回表紙を飾った群では22%、全体群では17%)メギドの属する後者の群では現時点ではサービス終了しているタイトルはない。
③ただし売上やユーザー数からすれば、後者の群で比較したとき、メギド72が発展途上のタイトルという可能性は低くないと思われる。
 裏返せば、今回ファミ通がメギド72の特集を記事にしたことは、近年の傾向からするとかなり特異な出来事である。すなわち、ありがたい。

 ファミ通のメギド72特集、内容もよかったけど、特集になったこと自体がとてつもなく良かったな、という感想です。おそろしいぐらい高望みだし、これだけ内容の充実した企画特集をやってくれたら次に何が出来るのか? というのはあるけれど、ずっと遠いいつか、また周年記念特集とか制作してもらえたら嬉しいな、というところで、今回は終わりとします。