メギド72『プルフラス・復讐の白百合』感想

 メギド72の六月度イベ『プルフラス・復讐の白百合』の感想です。これ今まででいちばん良かったイベじゃないかなあ。すごいです。メギド72はプレイヤーの声を本当によく拾い上げてくれているソシャゲで、それが非常に細やかなゲーム性の部分で発揮されてくる。具体的には、

 

①まずはデュークのようなレアエネミーのレアドロップ限定高性能SSRオーブについては今回見送り。とはいえインサニティは青龍号に劣らぬ魅力的な性能。

②育成素材用のRオーブについては道中でドロップ。たぶん地獄の犬狩りを踏まえた上での改善点。

③初心者は素材用の餌オーブが足りずになかなかオーブ育成に手を出せなかったけど、RブラブナとSRムタチオンのドロップ率を大きく上げることで対処。育成でのオーブ消費は激しいので初心者以外でも当然嬉しい。

④取得マップが限られている、あるいは頻繁には周回しないマップでドロップするため不足しがちな素材を複数周回が予想されるマップアイテムに設定。ツインハンター狙いの5-3で悪魔の血と聖者の護符、フォレスターおよびエンブリオ狙いのEX-2でプラチナムスター。つまり、周回の本来の狙いではない部分にも旨味を感じさせるデザインが完成されている。

 

 というところでしょうか。『二つの魂を宿した少年』で浮上してきた、あるいはゲーム内で気になりがちな問題を本当にきっちりと解決したイベントデザインで、さすがメギドの製作陣としか言いようがないです。素晴らしいです。しかもその頑張りようが一切押しつけがましくない!

 

 メギドの製作スタッフが何回か言及している改善ポイントとして、メギドはある程度まで進めてしまうとやることがない、という問題点があります。

 確かにメギド72にはシナリオ攻略のほかにキャラ育成とそれに付随する素材集め、オーブ育成、大幻獣狩りといったコンテンツが用意されていて、最初のプレイは「やることが……! やることが多い!」状態(金田一)なのですが、メギドの育成は段々と高速化できるシステムで、一度した苦労は無意味に反復させない仕組みになっています。代表例が攻略チケットで、あるいは星6を数体育成してしまえばVHコンプリートの難易度はぐっと下がる。

 最初のVH突破の興奮は大切にさせつつ、VHクリアで手軽に集められるようになった素材で星6を次々育成させていく。最初は苦労させ、そこからは急速に効率化させる。それ故に、ある程度ゲームが進むと「もうやることがない」ようにも見えてくる(実際にはそういうプレイヤーを飽きさせないためにこそPvPがあり、この段階に至ったプレイヤーならフリーバトルに手を出していそうなものですが)。

 

 あまりにすべてを高速化させてしまうと、ゲームとしての面白みがなくなってしまいます(ゲームの面白さにはある程度の「遅さ」も必要なのかもしれません)。単に石を砕くだけのゲームにならないように、メギドではいくつか早くなりがちなスピードを律速するブレーキが存在しています。たとえばそれはスキップ不可能な大幻獣撃破とEXオーブ育成の道だったり、あるいはイベント周回であったりするわけです。特に前者は「やることがなくて消化しようのないスタミナを一気に消化させる」という役目も果たしていて、なかなか憎い構成です。

 イベントにも大幻獣と同じようなエンドコンテンツを用意しよう。そういう心積もりで設定されたのが『背中合わせの正義』から始まるEXボスのSSRオーブであり、この路線はSSRファミリアン、難易度を跳ね上げたSSRサタニックリブラ、と続いていきます。

 それでも飽き足りないプレイヤーのために、というつもりで用意されたのがおそらく『二つの魂を宿した少年』のSSRデュークでした。 

 『二つの魂を宿した少年』は①シャミハザのポテンシャルを最大限活かせるSSR青龍号を初心者でも手軽に手に入る形式にしつつ、回復面で強力なSSRデュークを中級者以上のエンドコンテンツとして設定する、という仕組みにしています。デュークのドロップ確率の厳しさに苦しめられた人が多数出たのは既知のところであり、また奥義並みの高い回復性能を備えていたのも未入手の無念の想いを強くさせるところでした。ただ、これがもし驚異的なダメージを叩きだすオーブであったら、もっと問題になっていたと思います(入手の難しさもあったでしょうが意外と中級者以上でも使っている人を見かけません)。ここを回復にして様子を見るのは流石の手堅さだし、またいくらあっても嬉しい記憶の欠片を周回の副産物にしたのも嬉しいデザインでした。

 このイベントごとのエンドコンテンツをどう設定するのか、というのがメギド製作陣の現在の課題のように見えます。今回はデュークに相当するレアエネミーのレアドロップは存在せず(ツインハンターがそうかと思ったけど実際には5-3で落ちる)その種のエンドコンテンツはひとまず見送った形になりました。ただ、個人的には死んだ目で猫を探したのも悪くない記憶なので、またいつか同じ方向性のSSRオーブが来ることを楽しみに待っています。

 

 新たなSSRは2種。まず何より目を引くのは連続ダメージ20%以上バフ+自身にスキル2個追加と、ガチャ産かよと言いたくなるSSRインサニティ。一見ミミックと性能が変わらないようですが、特性は連撃ラッシュアタッカーにピッタリで、しかも自身にスキル追加はターゲティングのシステム上何気に便利です。ゼパルの燃えるゴミが増える、ヴィネやラウムの覚醒上げと組み合わせたらおそろしく強そう。あとは、今回新規に追加されたサラに乗せるのも便利そうです。自分にスキルを二つ追加しつつ、実際に点穴を乗せるのは他のメギド……という立ち回りはミミックのターゲティングでは不可能なので、そう考えると意外と器用な立ち回りも出来るオーブです。

 二種の新規SSRのうち、もうひとつはSSRフォレスター。最大HPの2割以上加算はありがたい。20%の回復と10%の攻撃バフよりはそっちが魅力。ただラッシュの最大HP加算をどう捉えるかは難しいところで、個人的にはラッシュアタッカーの耐久は盾役やフリアエ・アムドゥスキアスで耐えるほうが好きです。むしろ、これはサラのように稀有な耐久ラッシュ型のメギドのために用意されたもののように見えます。列回復のないアンドラスでも耐久と回復範囲を同時に強化出来ていいかも。あとはエリゴス。

 SSRについては新規追加メギドのサラを念頭に置きつつ、ゼパルのような既存メギドにも旨味が大きい性能に仕上げた、という印象です。

 シャミハザと青龍号ほど分かりやすくはないけれど、プルフラスの使い方が比較的分かりやすいのに対し補助サポーターのサラはやや扱いが難しいかもしれない。そう考えると、青龍号が帯水+雷攻撃の強力さを教えてくれたように、運営側から「こんな風にサラを使ってみてはどうでしょうか」というメッセージなのかもしれません。フリーバトルでも一人生き残ったサラにインサニティを発動させ、破壊的なダメージを叩きだす場面を見て興奮しました。

 

 SRは2種。SRムタチオンはデバフが強化出来れば楽しかっただろうけど、単体ダメージ強化はSSRドネ未所持なら有難い特性です。単体攻撃アタッカー、ということでプルフラスに持たせるのにちょうど良さそう。カウンターのSRウォールバスターは汎用性の高い防御バフに後列無敵1回と、これもターゲティングのシステム上何気に便利な性能。同じく防御バフ持ちのSSR盾の幻獣体ブニとは綺麗に差別化されていて、咄嗟の範囲攻撃を防御するのに便利そうです。智の番人バラム戦やアバドン戦にも使えるかも。

  RブラブナはRバーデンヴォルフに相当する育成素材オーブですが、今回特にいいなあと思ったのはとにかくSRムタチオンと並んで落ちまくること。ひとつは地獄の犬狩りの反省からの改善でしょうし、あとは課金しないと初心者は餌用のオーブ数が足りずに育成に踏み出にしくい現状に対して、だったらRオーブをたくさん配ってやるよ、というデザインじゃないかと思います。実際メギドのオーブ育成は地味に楽しくて、メギド自体の育成がLv70で終了する以上、育成要素が残るのはオーブのほうです。初心者にも是非このちんまりした楽しさを味わってほしいので、(そしてやっぱり強化したオーブは強いので)こういう取り組みは是非続けてほしいです。

 オーブはサバトで余るようで、実際は育成を始めたら意外と不足してしまうわけで、気軽に餌に使えるオーブが大量にもらえるのは(サバトそこそこ回したつもりですが)個人的にも非常にありがたかったです。バーストもいつか頼む……。

 ブラブナは幻獣の餌のために作られたものらしいので、そのあたりの設定も重なって楽しい。

 Rツインハンターも育成素材オーブですが、ブラブナほどではないけれど5-3を回せば真っ当な確率で落ちる。あまりに簡単に落ち過ぎてしまうとそれはそれで育成の楽しさが無いので、丁度いい塩梅だと感じました。

 他、何気にマップのドロップアイテムについても悪魔の血、聖者の護符、プラチナムスターと取得マップが限られる、あるいは青真珠やゴールドオイルといった重要素材のついでで手に入らず不足しがちなアイテムに着眼したドロップで、非常に細やかな配慮だと思います。

 あと、これはあくまで体感なのですが、エンブリオ幼のドロップ率が上がったように感じています。五個ぐらい落ちてます。

 気のせいかな。気のせいじゃなかったら、これもすごく嬉しいです。

 

 こんなにしっかりと問題点に向き合って毎回イベントのクオリティを上げてくれているのにそれを押し付けてこない慎ましさがすごい。

 あえて改善点を挙げるならば、その細やかさ故に、毎回の進歩がいまひとつ広く周知されていないのがむず痒い。もっとイベントデザインの丁寧さを説明していいじゃないかという気になってくる。でもそのちょっと信じられないような謙虚さがメギドらしいのかもしれない。

 あともうひとつ。これは難しいところだけど、ツインハンターが5-3でドロップするのに気付きにくい構造は気になった。あのイベントの説明文ではツインハンターがデュークの枠に相当すると勘違いしそうなもので、しかもオーブ育成のために果てしなく周回をするプレイヤーだとエンブリオを狙うはずなので、5-3をツインハンターが落ちるまで周回する可能性はかなり低い。サプライズなのかなあとも思うけれども、ちょっとここを上手く気付かせる仕組みが欲しかったな、というのが正直なところです。ただツインハンターをドロップしなくても、交換分のオーブでインサニティとフォレスター1体ずつなら星3に出来たので、それは初心者に対する配慮として非常に良かったと思います(またそれ故に希少オーブという勘違いも深まった節がある)。

 でも、後から誰かが気付いて「えっそうなんだ!」と情報の共有が広がっていくのもソシャゲの醍醐味だろうから、ここは微妙なところ。

 それとアイテム交換所のエンブリオ幼見送りは……あれすごく良かったと思うんですけど、オーブ育成のため延々周回をするプレイヤーだけ有難い要素ではあるので、アイテム全交換の達成感を考えて無しにしたのかな(だとしたらすごく理解はきっちりします)。今回で言えば研究フォトン、ブラブナシロップの余りを何か有効活用出来ないかどうか、については今後も考えていただけると嬉しいです。現状、特に初心者がオーブを★3まで育成するときとかに不足したガルドを一気に貯める手段が乏しいので(財宝クエストはあまりにしょぼい)ゴルド交換とかもいいんじゃないかなあと思います。ゴルドの稼ぎ方が現状コツコツやる以外だとメギドクエストのスタミナ割引キャンペーン+EXクリア前提ぐらいしかないのは、ちょっと初心者にはきつそう。

 以上、本当にあえて挙げるなら、という程度です。

 

 もっぱらゲームデザインの話ばかりになってしまったけれども、イベントストーリーも素晴らしかった。プルフラスの復讐、をめぐる話でありながら同時に親友を奪われたサタナキアの情念をそれとなく描く。プルフラスさえ居なければアシュレイがヴァイガルドへの脱出を図ることもなく、そしてそれ故に死ぬこともなかった。勝手かもしれないけれどサタナキアにだって復讐する資格はあって、さらにそこにソロモンが村の仇を討った過去が重なり合ってくる、という物凄くテクニカルな設定です(でもさらっと読める)。サタナキアの罪悪感をプルフラスはとっくに見抜いていて(このあたり心眼の設定を想起させて楽しい)アシュレイが愛したヴァイガルドを守るための戦いだからこそ、サタナキアが協力するであろうことを理解している。だからといって、何から何までサタナキアのことを許せるわけではない、とアジト台詞でちゃんと描写しているのも素晴らしい。

 配布がプルフラスなのはお前……こんなウケそうなキャラを配布って正気か!?(いつもの)と引きましたが、点穴システムを体験するのが5章1節でベリアルを仲間にしてからではあまりに遅い。始めたてのプレイヤーにも新システムを実際に触れてもらう上ではやはり配布がいちばん正しい選択なんだけど……選択なんだけど……やっぱでも正気じゃない! だからといってサラの性能は初心者にはまず理解されないのでアタッカーを配るしかない! それはそうなんだけども! そうなんだけども! シャミハザのときもそうだったけど!

 サタナキアさんには何卒オタクにガチャを回させていただきたい次第です。あとブラブナのキャラデザが良過ぎるんですけどこれまさか今回のイベントだけで使い捨てるつもりなのか? 大幻獣ブラブナとかない? 色変え再登場するよね! ぜひしてください。

 そんなわけで、非常に満足度の高いイベントでした。『二つの魂を宿した少年』があまりに楽しかったのでこれを超えるイベントはちょっとないんじゃないかと思ったんですけれども、いや、もう本当にすごいとしか言いようがないです。製作スタッフの皆さんは本当にいつもいつもお疲れ様です……5章1節もすごく良かったんだけどちゃんと休んでる!? 大丈夫!? 引き続きメギドくんのこれからが楽しみです。