2021年の『そして灯火は静かに消える』までの四つの物語において、その基底音としてあった主題は「愛」だった。 固執、という呼び方も出来る。たとえば将来の妻に向けて、ある男からこんな風に物語られた情念のことだ。 フォラス「…俺の中にはもっと独善的な…
悲劇とは何か マスティマ 「おお、ヴァイガルドよ!私たちの侵略に怯え、泣いて許しを請う憐れなヴィータたちよ!このマスティマが、今こそ真実を語ろう!この世は悲劇だ、すべての命はその結末へとさ迷いながらも歩みを止めぬ愚直な犬だ!行先がどこかもわ…
※メインストーリー8章2節までの重大なネタバレがあります。 支配と自立 『フルカネリ、最後の計画』は、もちろん前後編にまたがって続く物語の前半に過ぎない。デカラビアの真意は明かされないし、ひとつの物語としてある程度完結していた2018年、2019年の前…
絵を描く人はよく作業という。言葉を書く人は、あまり使わない言葉だ。たまたま共通する言葉に、原稿がある。これは、もうすこし作業の色合いを帯びた語かもしれない。とはいえ、絵や漫画を描くことは工芸的な作業として見なされがちだが、言葉を書くことは…
二月から三月のメギドは配布メギド無しだった。プロデューサーレターによると、四月まではこの方針のままということで、理由となったオリエンスの修正にそれだけ重いインパクトがあったのは間違いないだろう。三か月の配布メギド無しには何らかの影響がある…
『心惑わす怪しき仮面』はサタナキアがリジェネを果たす物語であり、そしてプルフラスが復讐を終える最初の一歩を歩むまでの物語でもある。先に結論から書くならば、自己の合理性を最優先としていたサタナキアが「マナー」に順応し、アシュレイという他者に…
前回開催時にあまりちゃんと読めなかったイベントなのだが、今回ゆっくり目を通すと非常に面白かったので、感想を書いておきたい。 『キミに捧げし大地のソナタ』におけるサタナイルとバルバトスの境遇は、作中で彼自身が感慨を覚えるように、ごく近しいもの…
スコルベノトの告知を見たとき、女装少年の話か、と思った。そうなると予想がつくのは男女の性差(社会的な圧)なんて気にせず、自分の好きな格好をすればいいという流れで、実際スコルベノトのキャラエピはそういうベタな話でもある。ただ、実のところ、イ…
『守りたいのは、その笑顔』は、ネフィリムとニバスの戦いの物語だ。それは同時に、6章の「戦後」を描く物語でもある。 2018年末の6章2節以降、メギドがイベントシナリオで繰り返してきたのは6章の主題の再奏だった。たとえば家族を2章の王都侵攻作戦で失い…
『美味礼賛ノ魔宴』は、まずは2018年クリスマスの『BEHEMOTH』との対比を誘う。 ラウムとアモンは、共に過去、①父親の過失により、②家計が傾いた時代を経験しており、③現在の父親は成功した人物になっている(ライオは王宮付きのキャラバンの長に、ステファ…
複雑な物語だ。 話はフォカロルの武器が破壊され、修理のためにデオブ村へ向かうという導入から始まり、最後にはソロモン・アガレス・村人たちの三者三様の物語が展開される。この三つの物語が同時進行するだけに情報量は当然多いし、更にアガレスの言動や心…
2018年12月は、ベヒモス前後編・保健室イベント・6章2節と質・量いずれも相当のテキストが連続した時期だった。たしかにこれまで月初にイベントを開催し続けているとはいえ、まさか1月の第1週目もその規則を守るとは思わなかった。初回『悪夢を穿つ狩人の矢…
メギド72・2019年10月の月初イベント『さらば哀しき獣たち』の感想です
いまさら霊宝を触り出したけど、非常によく出来たゲームデザインだと思う。なので、短く書いておきたい。 まず霊宝が開発された経緯は、はっきりとは書かれていないので結果的にそうなっただけに過ぎないかもしれないが、おそらくメギドの「長期プレイヤーの…
一年に一度ぐらい、おそらくはもっと低い頻度なので嘘を書いている気もするが、「現代文学ってどこから読めばいいんですか?」と訊かれることがある。私はもっぱら日本の現代小説ばかり読むので、じゃあこんな風に読むのはどうか、という提案は出来る。今回…
アイムRが実装されたので、雑感とハイドロボムのこれまでとこれから。 まずハイドロボムで挙がっていた既存の問題については概ね潰されている印象がある。 かつ、ゲームを進めるうえで必須とは言えない性能であり、あくまで楽しみ方を広げるための実装とも思…
メギド72がついに週間ファミ通の表紙を飾った。ついに、というのは調べ物をしてから「これ、よく特集やってくれたな…」という感慨を覚えたからだ。 たしかに、もともとファミ通はメギドをかなり好意的に紹介してくれるメディアだった(東京ゲームショウでの…
『見習い女王と筋肉の悪魔』お疲れ様でした。今回のイベントシナリオについては、特にウァプラのキャラ像をめぐって活発な議論を見ました。私も議論や感想のいくつかを読ませていただいて、あらためて『見習い女王と筋肉の悪魔』を再読する機会になりました。…
メギド72に関しては既存プレイヤーのリターンレート、平均課金額などの主要指標は優秀。改めて熱量の高いユーザーに支えられていると認識。課題は新規ユーザーの獲得。CMを打ったが期待したほどの効果がなかった。#メギド72 — Takashi Mochizuki (@mochi_wsj…
十月メギドの感想です。今月の更新量は壮絶に多かった……楽しかったです。ネタバレ配慮は無し。 ①10月度イベント『ハルマを夢見た少女』(リジェネレイトの物語と、「通りすがり」と関係する難しさについて) 1.リジェネレイトイベント2回目。衣装追加される…
9月メギドのイベント諸々の感想です。今月も楽しかったです。 ①9月度前半「傀儡の王と操られた花嫁」1.ついに出現した新概念「リジェネレイト」。・キャラの新しい一面を知りたい(ただし既存のキャラクター像から大幅に外れていてはほしくない)・新しいキ…
『嵐の暴魔と囚われの騒魔』の感想について、続編です(前回は下記)。 A.『嵐の暴魔と囚われの騒魔』について私が読み落としていた部分についてまずは書きます。それは(明瞭そのものだろうけれども)これが「差別」の物語である、ということです。 作中を…
今回はメギドのシナリオ『嵐の暴魔と囚われの騒魔』の感想、および表現面での指摘です。A.『嵐の暴魔と囚われの騒魔』が優れたシナリオである、ということを説明します。 B.『嵐の暴魔と囚われの騒魔』において問題とされ得る、二点の表現の吟味を行います。…
東山彰良『僕が殺した人と僕を殺した人』は2018年の読売文学賞受賞作で、しっかりした文学賞なのですが、選考委員に腐女子でもいたのか? ってぐらいオタクのツボを完璧に突いた超良質の泣けるメリバBLなので紹介します。 とにかく49歳直木賞作家おじさんの…
メギド72の六月度イベ『プルフラス・復讐の白百合』の感想です。これ今まででいちばん良かったイベじゃないかなあ。すごいです。メギド72はプレイヤーの声を本当によく拾い上げてくれているソシャゲで、それが非常に細やかなゲーム性の部分で発揮されてくる…
昔宇野千代のエッセイで、いつも座っている部屋の窓から外を見て、風景を文章にすれば自然と小説が始まると書いていて、半信半疑で試してみたがまったくうまくいかなかったことがある。筆を温めるというのか、小説は書けば書くほど書きやすくて、前の場面を…
料理が出来なくて部屋が汚いオタクのための紅茶の淹れ方、というよりは端的にここ半年の自分の紅茶の話です。 ①うちの紅茶の淹れ方 料理が出来ないオタクというのは一種の病であり、それ相応に最適化した料理をせねばなりません。トマト切ってオリーブまぶし…
メギド72は先月の大型アプデで色々もう完成してしまっていて、正直文句のつけようがないです。にもかかわらずあえてメギド72に「こうなったりしないかな」という個人的要望をまとめました。いやもう、基本わがままな要望でしかなく、すでにスタッフさんはか…
メギド72GWイベ『二つの魂を宿した少年』感想です。 強力ディフェンダーのブニさん無料配布回が終わり、無難にアンドレアルフスさん復刻かな? と思いきやまさかの間髪入れずのシャミハザくん無料配布回。商売する気ある? 大丈夫? といういつものムードで…
ドリフェスのサービス終了が告知されて約一か月が経った。別にソシャゲに限らず終わらないものはないわけで、物事の終わりについていつまでも野放図に語り続けるのは私はみっともないと感じる。特に私は抑制、筆を抑えることが持ち味の作家が好きな分、喪失…